白番の初手e4に対してd5と応じる、Scandinavian Defense / スカンジナビアン・ディフェンスについて解説します。
セオリーでは最序盤ではクイーンを前に出さないほうが良いと言われていますが、このオープニングでは比較的安全な場所にクイーンを序盤に配置しています。その後マイナーピースを展開することで、強力なクイーンを自陣から出しておくメリットを活かしながら攻めようとする戦い方です。
記事後半では、クイーンを展開を遅らせてマイナーピース展開速度を上げる方法についても記載しています。
Scandinavian Defense / スカンジナビアン・ディフェンスの狙いは?
中央へすぐにカウンターを仕掛け、中央支配させない狙いがあります。
また、ポーン交換を仕掛けるのでオープンな展開を望んでいます。
e4に対してのd5は、Lichess レート1,200~2,000では使用率で9%となっています。
Scandinavian Defense / スカンジナビアン・ディフェンスの流れは?
白:初手e4はあらゆるレベルで最も多くさされている初手。
黒:d5とぶつけます。
白:ポーンをテイク。
黒:クイーンで取り返します。
白:ナイトでクイーンが攻撃。ナイトで攻撃することでクイーンは逃げる必要があり、黒番はテンポ(時間)を失います。価値の高い駒を価値の低い駒で攻撃する動きはテンポを得るために、序盤・中盤・終盤関係なくいつでも非常によく使われます。
黒:比較的安全なa5に逃げます。
ナイトを展開してきた場合は?(4. Nf3)
「パターン1:4. Nf3の場合は?」のまとめの盤面へジャンプ
白:自然なナイトを展開。
黒:マイナーピースの展開をしていきます。ナイト展開に対してビショップでピンします。
白:ナイトを取られた後にダブルポーンができるのを嫌がって、ナイトを取られてもビショップでテイクバックできるよう守ってきます。アンピンと言います。
黒:マイナーピース展開を進めていきます。
白:キャスリング。
黒:ナイト展開し、大体のマイナーピース+クイーンを展開することができました。
Lichessレート1,200~2,000の場合、この局面での勝率は白:黒=40%:57%です。
白:ビショップ排除のためのポーンでの攻撃。
黒:ポーンでビショップを取られたときのテイクバックの準備。
ビショップを攻撃されると逃げたくなりますが、h5とポーンで取り返せるようにします。
→Fishing Pole Trap(フィッシングポールトラップ)と呼ばれ、ビショップやナイトを犠牲にすることでhファイルやaファイルをオープンファイルにしてしまおうという罠です。
よく使われる手なので攻めでは使えるように、守りの場合は引っかからないように覚えておきましょう。
仮にビショップを取られたとしてもhファイルがオープンファイル(ポーンがない列のこと)になるので、クイーンをaファイルからhファイルに移動させる手でキングを追い詰めることができます。
※このビショップを犠牲にする可能性のある手が有効なのかは、局面によってよく考えて指すようにしましょう。
狙いもなくこの手を指すとビショップを失うだけになりますので、必要な時は逃げ、強力な攻撃に繋げられるときはこの手を使ってみるというメリハリが必要です。
下の盤面を動かして、ここまでを振り返ってみましょう。
<パターン1:4. Nf3の場合>
中央へポーンを進めてきた場合は?(4. d4)
「パターン2:4. d4としてきた場合は?」のまとめの盤面へジャンプ
白:ポーンでの中央への支配を主張。ビショップの道を開く意味もあります。
黒:ナイトの展開。
白:ナイトの展開。
黒:ビショップの展開とピン。
白:ビショップによるアンピン。ピンから逃れる方法の1つ。
黒:ナイトの展開。
白:ポーンでナイトを攻撃してきます。
黒:キャスリングによりルークでポーンを相手クイーンにピンでき、ナイトを守ることができます。
これで相手が気付かずにナイトを取ってしまうと、相手のクイーンを取ることができます。
白:クイーンを守るためのビショップの展開。
黒:相手はビショップで守ってきたので、ポーンを得することができました。
下の盤面を動かして、こちらもを見直してみましょう。
<パターン2:4. d4としてきた場合>
Modern Variationの流れは?
「Modern Variation」のまとめの盤面へジャンプ
こちらはすぐにはクイーンを前に出さないことで追い回されることを避けるラインです。
白:ポーンをテイク。
黒:クイーンで取りに行くとナイトで追われてしまうのでナイトを展開します。
白:ナイトで守ってきます。
黒:構わずナイトでテイクします。
白:ナイトでテイク。
黒:クイーンでテイクバックすると、それまでc3にいたナイトがいないため追い回されにくくなります。
テンポ(黒番の動く時間)を失いにくくなっています。
その後は自然にマイナーピースをお互い展開していきます。
ビショップも展開。
お互いキャスリングしてキングの安全を確保。
ポーンでセンター支配を補助。
この盤面では、Lichessレート1,200~2,000では黒番の勝率が55%となっています。
<Modern Variationの流れ>
Icelandic-Palme Gambitの流れは? (高勝率)
「Icelandic-Palme Gambit」のまとめの盤面へジャンプ
このラインはクイーンを出すのを更に遅らせるやり方です。
2つ目ポーンも捨てることで白を上回る展開速度を狙います。
白:ポーンをポーンで守ってきます。
黒:2つ目ポーンも捨てることで展開速度を上げていきます。
白:ポーンをテイク。
黒:ビショップでテイクバックします。黒はマイナーピース2つ展開しているのに対して白は0です。
ポーンを犠牲にしてしまう一方でマイナーピースの展開速度を上げる狙いで進んでいきます。
白:ポーンでセンター支配。マイナーピース展開は0。
黒:ビショップを展開しチェック。3つ目のマイナーピース展開。
白:ビショップで守ります。
黒:ビショップで取りに行くと相手の展開を助けてしまうので取りません。
クイーンでビショップをサポートします。ビショップが取られてもクイーンが展開できるようにしています。
このように「目の前にある駒を取らずに、テンション(お互いが取り合える状態)を保つこと」を覚えることが上達するための一歩です。どの場面でも適用できる考え方なので頭の片隅に置いておきましょう。
白:ビショップでのテイク。
黒:クイーンでテイクバック。クイーンが展開できました。
「相手に取らせることができれば、自分の駒が最終的に前に出ることになる」ということを覚えておくと良いでしょう。この考え方を取り入れれば必ず一歩成長できます。
白:クイーンで守ります。
黒:先程のビショップ同様、今回はナイトでクイーンをサポートします。テイクバックの準備で常にこちらの駒が展開できる状態にしています。
白:クイーンでテイク。
黒:ナイトでテイクバック。結果的にお互いの駒が減った一方で、黒番のナイトが展開できたとわかります。
白:c2の地点をナイトで守ります。(キングとルークフォークを防ぐため)
黒:キャスリングしてルークを攻撃参加させます。クイーンサイドキャスリングは局面によってはルークの攻撃参加が最速でできるメリットがあります。
この局面ではハーフオープンファイルにルークが既に配置されているのでルークの利きが既に相手ポーンを狙っています。
この局面では、Lichessレート1,200~2,000では黒番の勝率が68%と非常に高い勝率となっています。
<Icelandic-Palme Gambitの流れ>
まとめ
黒番は展開が白より普通遅れますが、スカンジナビアンディフェンスは白に負けない速さで駒を展開することができます。初手e4の黒番で窮屈さを感じている人は使ってみてはいかがでしょうか。