スラブディフェンス/Slav Defenseの狙い・特徴は?
スラブディフェンスは初手d4のクイーンズ・ギャンビットに対するディフェンスです。
クイーンズ・ギャンビットディクラインドとは異なり、ライトスクエアビショップを閉じ込めずに自陣から出して活用できる特徴があります。
よくある流れ
メインライン
白:初手d4。チェスでは2番目に多く指される初手です。
黒:d4に対してd5で同等の中央支配を狙います。最も一般的な対応です。
白:クイーンズ・ギャンビット。d5への圧力をかけます。
黒:d5を保持するためにサポートのc6。(e6ではない!)これがスラブディフェンスの特徴。
ライトスクエアビショップを閉じ込めず後で活用するためです。
白:さらにd5に圧力をかけます。
黒:さらにd5を守るためにNf6とサポート。
白:自然なナイトの展開。(4. Nf6)
黒:ライトスクエアビショップを展開したいところですが、ここでdxc4とポーンを取るのが重要。
先にビショップを展開してしまうと白に嫌な手があるためです。
(クリックで開閉)ビショップを先に展開してしまった場合の「白の嫌な手」とは・・・
黒:Bf5は一見自然な手で問題ないように見えますが、実際は悪手です。
白:cxd5とテイク。
黒:テイクバック。
白:クイーンにより2箇所のポーンを狙われることになります。
この局面になるとLichessレート1,200~2,000では勝率が34%にまで落ちます。
これは避けたいラインですね。
(クリックで開閉)4. Bg5としてきた場合は? 駒得できる可能性があります。
g5のビショップをフォークするための仕掛けに入ります。
ナイト交換で5thランクを開きます。
白が不注意でe3としてしまう場合、フォークが決まります。
Lichessレート1,200~2,000では白番の51%が見逃す動きです。
白:黒番のb5を防ぐためにa4とします。(5. a4)
黒:ようやくビショップを展開できました。「ビショップを自陣に閉じ込めず有効に攻めに使うこと」がチェスではポイントになります。
(クリックで開閉) 5. e4と中央を突いてきた場合は? ポーン得できる可能性あり。
黒:c4をポーンでサポートします。
白:c4-b5-c6のポーン連携を乱すためにa4とプッシュ。
黒:構わずb4としてナイトに迫ります。
白:ナイトは逃げるしかありません。
黒:重要なセンターポーンであるe4ポーンを取ることができました。
白:ライトスクエアビショップ展開のために道を開きます。
黒:ダークスクエアビショップ展開のために同様に道を開きます。
白:先にテイクされていたポーンをテイクバックできました。
黒:ナイトをキングへピンします。
白:ピンから抜けるためにキャスリングします。ピンされたままだとナイトの動きが制限されるためです。どのオープニングでも使える考え方です。2つの目的が1つの動きで達成できる手は価値のある手です。
黒:同様にキャスリングし、キングの安全を確保。
白:クイーンをeファイルに配置し、ポーンプッシュの準備をします。
黒:白のポーンプッシュでの攻撃を予め避けるためにビショップをg6へ退避。
白:前線へのナイトの配置。ビショップのキャプチャにより黒キング前のポーンを乱すことなどを狙っています。
黒:構わずナイトの展開。相手の判断を迫ります。
白:ビショップをテイク。
黒:ポーンでテイクバック。中央支配は白優位ですが、黒番も悪くない駒展開ができています。
この局面でLichessレート1,200~2,000では黒番の勝率51%の実績があります。
スラブディフェンス・メインラインのまとめ:
Quiet Variation (4. e3)
Quiet Variation (4. e3)のまとめへジャンプ
白:e3とビショップの道を開けることで、黒がcポーンをテイクするのを防いでいます。
※ここで黒がdxc4とポーンを取ってしまうと白番ビショップがc4に展開され、白番にとって理想的なポジションになってしまいます。
黒:a6によりbポーンをサポートする準備をします。
白:自然なナイト展開。d5への圧力強化。
黒:b5を2ポーンで支え、c4へ圧力をかけます。
白:中央のポーンをテイク。
黒:テイクバック。メインラインで起こりうる白番Qb3でのb,dポーンへのダブルアタックはaポーンがbポーンを守っていることで心配がいらなくなっています。
白:攻守バランスの取れた位置にビショップを展開。
黒:ビショップでナイトをピン。ポーンチェーンにより自陣から出られなくなる前に活用します。
白:キングの安全を確保するためのキャスリング。
黒:ビショップの道を開けつつ中央をサポートしています。ビショップを出した後なのがポイント。
白:ピンされたままだとクイーンの動きが制限されるため、排除したい意図のh3。
黒:ナイトをテイクし、Ne5の脅威を排除します。h3で一手使わせているのも大きい。
白:クイーンでテイクバック一択。ポーンで取るとキングの前が開いてしまい危険になります。
黒:ナイトを最も自然な位置へ展開。
白:クイーンサイドのスペース確保。
黒:キャスリングの準備のビショップ展開。
白:クイーンサイドのスペース確保。
黒:キャスリングでキングを安全な位置に移動できました。
ここまで順調に展開できれば、Lichessレート1,200~2,000では勝率52%となっています。
Quiet Variation (4. e3)のまとめ:
まとめ
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドと混同されそうな2手目ですが、こちらはスラブディフェンスと言います。
ライトスクエアビショップを自陣から出し、ピースを有効に活用しようという意図でコマ展開を進めていきます。
クイーンズ・ギャンビットを白番で使う人も出会うパターンです。
スラブディフェンスを使う人だけでなく、スラブディフェンス対策としてもオープニングの意図を把握しておくと対応しやすくなると思います。