タクティクスをできるだけ知っていることが中級者に近づくための第一歩です。
ここでは初心者向け以外のタクティクスを解説していますので、これらを身に着けてレベルアップを目指しましょう。
- 中級者になるためのタクティクス
- ダブルチェック(Double check)
- X線攻撃(X-ray attack)
- ツヴィッシェンツーク(中間手/Zwischenzug/Intermediate move/ Intermezzo)
- クリアランスサクリファイス(Clearance Sacrifice)
- インタフィアレンス(妨害/Interference)
- アンダーマイニング(守り駒の除去/Undermining/Removing a defender)
- オーバーロード(過負荷/Overload)
- ウィンドミル(風車/Windmill)
- パーペチュアルチェック(千日手/Perpetual Check)
- ステイルメイト(Stalemate)
- デコイ(おとり/Decoy/Deflection)
- デスペラード(Desperado)
- まとめ
中級者になるためのタクティクス
ダブルチェック(Double check)
ダブルチェックは2つの駒により同時にチェックをかけることを言います。
このようにルークの前のビショップが移動し、ルークの攻撃が発生します。
非常に強力なチェック方法です。
ダブルチェックのどこが強い?
2つの駒が同時に攻撃をかけているのでキングは逃げるしかありません。
例えばビショップをポーンで取っても、ルークの方のチェックをガードできないためです。
また、ダブルチェックに使った駒はチェック時点ではキャプチャされません。
そのため、上の画像のようにポーンに取られそうな場所にも配置できるメリットがあります。
X線攻撃(X-ray attack)
X線攻撃とは、相手の駒の向こう側を間接的に攻撃している状態を言います。
この場面でX線攻撃を考えてみましょう。
ここでクイーンでルークを取りました。f1にルークがなければタダ取りされる手ですが、
f1のルークがf8のマスを間接的に攻撃しているので、クイーンが取られてもf1のルークで取り返してチェックメイトできます。
「相手の駒を挟むように駒を配置する」ということを意識するとX線攻撃に気付きやすくなるでしょう。
X線攻撃はバックランクでの守りでも使われます。
下図のように黒番はどちらのルークが取られても、もう一方のルークで取り返せます。
他のX-ray attackの例
・相手の駒をルークやクイーンで挟み込むイメージを持っておくと見つけやすい。
ツヴィッシェンツーク(中間手/Zwischenzug/Intermediate move/ Intermezzo)
ツヴィッシェンツークとは簡単に言うと「間に挟む手」のことです。
当たり前に見える手の前に別の手を先に指すことで、様々な呼び方があります。
相手がルークを交換させようとしています。
黒はルークを交換するのがベストでしょうか?
ルーク交換がまず頭に浮かぶかもしれませんが、「当たり前に見える手を指す前に、別の動きを挟んで有利になれないか?」と常に考えるのがポイントです。
チェスにおいては非常によく使う考え方で、相手のミスに乗じて駒得できる可能性があります。
この例ではチェックしつつ相手のナイトを取ることでf4のルークを後でタダ取りでき、結果ナイト1つ分の得になります。
クリアランスサクリファイス(Clearance Sacrifice)
クリアランスサクリファイスとは、行きたいスクエアを邪魔している駒を捨てるためのサクリファイスのことです。
下の例では、◯のルークがいなければチェックメイトできるのに・・・という状況です。
ルークを捨てることで、b2のスクエアが空きました。
チェックしているので次の手でチェックメイトできます。
邪魔な駒がいる時は捨てられないか検討してみるのもありです。
インタフィアレンス(妨害/Interference)
インタフィアレンスとは、2つの駒の間に駒を割り込ませて連携を断ち切ることを言います。
以下の例では白番のナイトはクイーンに守られています。
妨害できる上手い手はあるでしょうか?
ナイトとクイーンの連携をポーンで妨害し、ナイトを孤立させました。
この後白番のクイーンは逃げる必要があるためナイトをタダ取りできます。
相手が遠くから駒を守っている時には、その連携をポーンで妨害できないか考えると見つけやすくなります。
アンダーマイニング(守り駒の除去/Undermining/Removing a defender)
展開された相手ビショップはナイトに守られて問題ないように見えますが、本当にそうでしょうか?
ビショップを守っているナイトを除去すると、ビショップの守りがなくなりタダ取りできます。
展開された駒が他の駒で守られている時、守っている駒を除去できないか考えるようにするとよいでしょう。
オーバーロード(過負荷/Overload)
1つの駒が2つ以上の駒を守る必要がある状態をオーバーロードと言います。
ここでは白番のポーンがナイトとルークを守っています。
白番ルークをルークで取ると、ポーンはナイトの守りを放棄しなければなりません。
そのため白番ナイトをタダ取りできます。
オーバーロードはクイーンなどでも起きるので、2箇所同時に守っている駒があったらオーバーロードのタクティクスを考えてみましょう。駒得できる可能性があります。
ウィンドミル(風車/Windmill)
チェックをディスカバードチェックを繰り返しながら駒を取り尽くしていくタクティクスです。
下の例ではルークを左右に動かし、2ndランクの駒を取っていき最終的にはクイーンまで取れてしまいます。
相手が戦意喪失するくらいに強力な動きです。
ディスカバードチェックをしながらルークをポーンを回収。
ルークでまたチェック。これを繰り返す。
ルークを逃がす際に2ndランクの駒を取る繰り返しです。
<Windmillの一例のgif>
パーペチュアルチェック(千日手/Perpetual Check)
パーペチュアルチェックとは、何度でもチェックできる状態になることを言います。
勝ち目が薄いと判断した時に最後の手段として引き分けを狙うために有効です。
・ここから引き分けに持ち込むためにはどうしたら良いでしょうか?
クイーンを使ってf6とd8の移動をし、チェックを繰り返せば黒はそこから抜け出せずドローにできます。
同形三復(スリーフォールド・レピティション/Threefold repetition)といい、盤上が3回同じ形になったら引き分けというルールを利用しています。
将棋における千日手のようなものです。
<パーペチュアルチェックのgif>
ステイルメイト(Stalemate)
ステイルメイトとは、手番のキングがチェックされていない状態で動かせる手がない状態を言います。
・下の例では白番は駒のポイントでは完全に圧勝ですが、ここでナイトを取ってしまったらどうなるでしょうか・・・?
動かせる手がなく、ステイルメイトとなりドローです。
相手のキングが動けない状態の時はあえて相手の駒を動かせる状態で残しておくと、ステイルメイトにしてしまうミスを防げます。
逆に完全に負けている時には、自分のキングが動けない位置にあえて移動させることでステイルメイトを狙う手もあります。
デコイ(おとり/Decoy/Deflection)
デコイとは、特定のスクエアから駒を遠ざけるための動きのことです。
※補足:遠ざけられた駒がキングの場合はアトラクション(Attraction)と言います。
・ここではルークでチェックをかけ、相手のクイーンがc7の守りから離れざるを得なくなっています。
クイーンをおびき寄せることでc7のスクエアでチェックメイトできました!
相手の駒が邪魔だと思ったときには、「そこから離れざるを得なくするためにおびき寄せられないか?」と考えると思いつきやすくなります。
デスペラード(Desperado)
一時的にサクリファイスをしてポイントを失いますが、その後のフォローを含めてトータルで駒得しようという動きのことです。
この局面ではお互いのクイーンが攻撃されています。まず相手のクイーンを取る場合は相手もこちらのクイーンを取り返してくるためポイントはプラスマイナスゼロです。
・駒得できる手はあるでしょうか?
デスペラードによりクイーンをサクリファイスする手があります。
一時的にポイントを失います。
しかしルークで相手のクイーンを取ることができるのでトータルでは5ポイント得してします。
まとめ
タクティクスの名前を知っておくと記憶に定着させやすくなるので、タクティクス名と一緒に動きを覚えていくのをおすすめします。
1つでも多くパターンを認識していると対局中に気付きやすくなります。
この中でよく使う考え方は「ツヴィッシェンツーク(中間手)」です。
駒の取り合いが発生するときには当たり前に見える手以外に、別の手順(取る順番)を検討する癖をつければ駒得のチャンスを掴める可能性があります。
感覚で取り合いする癖がある人は「ツヴィッシェンツーク(中間手)」を意識してみるとプレーが改善するはずです。
チェスが強くなる人の本