2手目にビショップを展開することで相手にナイトをどうするのか判断を迫っていく、トロンポウスキーアタックをご紹介します。
相手が慣れていない場合、最序盤から相手に考えさせることができるおもしろいオープニングです。
トロンポウスキーアタックの特徴、狙いは?
トロンポウスキーアタックの特徴は2手目に相手のナイトへ交換を狙って圧力をかける点です。
仮に交換が受け入れられた場合、白番はビショップを失うデメリットがありますが、その代わりに相手のポーン構造を破壊できるメリットがあります。
オープニングの複雑な理論を避けたい人にもおすすめです。
トロンポウスキーアタックの流れは?
白:トロンポウスキーアタックは初手d4で始まります。
黒:キングズ・インディアン・ディフェンスなどを狙っている時にナイトを展開してきます。
白:このナイトをビショップで攻撃するのがトロンポウスキーアタックです。
この後よくある黒番の3パターンの動きについて見てみます。
ナイトとの交換ができる時(2… d5)
ナイトとの交換ができる時(2… d5)まとめの盤面へジャンプ
・ナイト・ビショップを交換後はクイーンサイドキャスリングし、相手のキングサイド攻めを狙って進めていきます。
白:ナイトをテイク。
黒:ポーンでテイクするしかありません。
白:トロンポウスキーアタックの狙い通りダブルポーンにできました。ビショップを展開するための道を開きます。
白:キングサイドを狙う位置にビショップを展開。
黒:安全を確保するためのキャスリング。
白:キングサイドへのナイト移動を見越してd2に展開。
白:クイーンをキングサイド攻撃に参加させることに加えて、クイーンサイドキャスリングの準備にもなっています。また、f5へのポーンプッシュをしにくくしています。
白:クイーンサイドキャスリング。相手と逆サイドにキャスリングするとお互いポーンストームがしやすくなるため激しい展開になります。
白:ナイトをe2に展開してルークを相互に守る形にします。
この後の攻め方としてはポーンストームを行うことでキングサイドを攻めていきます。2つのルークがキングの目の前に配置されるので迫力のある攻めになります。
ナイトとの交換ができる時(2… d5)まとめ:
クイーンでナイトを守ってきたとき(2… e6)
クイーンでナイトを守ってきたとき(2… e6)まとめの盤面へジャンプ
・ピンを活かして中央をポーンで支配し、相手ナイトを追い回しつつ駒展開を進めていきます。
黒:ダブルポーンにしたくないのでクイーンで取り返せるようにした手です。
白:黒番のナイトはピンされているので中央への攻撃が無効化されています。センターをポーンで完全に支配した理想的な形になっています。
黒:ピンを解除する一手。よく使われる守備的な方法。
白:ナイトへ攻撃を仕掛けテンポ(時間、ターンのこと)を得ます。
黒:ナイトを中央へ逃します。
白:ビショップを交換してしまうメリットがないのでビショップを引きます。
黒:中央の弱点へのカウンターの意図。
白:逆にナイトへ圧力。
白:ポーンテイクでナイトを攻撃し続け、相手の好きなようにさせません。
黒:ビショップでテイクバック。
白:クイーンを展開してc4を守りつつキングサイドを攻撃する狙いを見せます。
黒:ポーンで守るとキングサイドの形が悪くなり、弱点(赤丸)が発生し後の攻撃に利用できます。
白:自然なナイト展開。
白:マイナーピース展開を続けていきます。
白:一例としてクイーンサイドキャスリングすればクイーンの前にルークを配置できます。
相手クイーン前のルークは間接的であれ配置しておくと、後々ディスカバードアタックなどのタクティクスで活躍する可能性があります。
クイーンでナイトを守ってきたとき(2… e6)まとめ:
ビショップをナイトで攻撃してくる場合 (2… Ne4)
ビショップをナイトで攻撃してくる場合 (2… Ne4)まとめの盤面へジャンプ
・ビショップを狙われたらhポーンで守り、交換からルークのハーフオープンファイルを活かして攻める手があります。
黒:交換を嫌ってビショップを狙います。
白:hポーンでビショップを守ります。
白:交換によりhファイルが開きました。ルーク前のハーフオープンファイルは攻めやタクティクスに利用できます。
黒:bポーンが邪魔なのでクイーンで取りたい意図があります。
白:突き捨てる手が上手い手です。
黒:ポーンをテイク。キングサイドのポーン構造が崩れて弱体化しています。
白:ビショップ展開の道を開きます。
白:bポーンを狙える位置に配置しました。相手が不注意ならgポーンをビショップでタダ取りできます。(ビショップをhポーンで取り返すと黒番ルークがテイクされます。)
黒:キャスリング。
白:ここでルークサクリファイスが上手い手。
黒:キングでテイク。
白:クイーンでチェック可能です。gポーンは図のとおりビショップによりピンされているのでクイーンを取れません。
白:ビショップでポーンをテイクしキングに迫ります。この後はまとめの盤面で継続の一例を示しています。
ビショップをナイトで攻撃してくる場合 (2… Ne4)まとめ:
まとめ
2手目から相手に大きな判断を迫れるオープニングはチェスにおいてそれほど多くありません。
その意味でトロンポウスキーアタックは相手にプレッシャーをかけるのに最適のオープニングです。
初手d4に対して黒番の「1… Nf6」はインディアンゲームと呼ばれ、クラブレベルでは2番目によく指される応手で、トップレベルでは一番よく指されています。
黒番の初手のナイト展開に対して積極的に仕掛けていきたい、または対策したいと思った時はトロンポウスキーアタックを使うのも面白いでしょう。