クイーンズ・ギャンビット/Queen’s gambitとは、白番初手d4開始し、1.d4 d5 2.c4とするオープニングのことです。トップレベルのグランドマスター、Liren Dingがよく使っています。
チェスで最も人気のあるd4オープニング(定跡)の一つです。今回は白視点で主にクイーンズ・ギャンビット・ディクラインド/Queen’s gambit declinedをどのように進めていくべきか見ていきます。
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド(略称QGD)の特徴は?
クイーンサイドから着実にピース展開し、良い形をつくっていくのがクイーンズ・ギャンビット・ディクラインドの特徴。
チェスの基本は初手e4開始が基本ですが、d4開始は2番目に人気のあるムーブです。
このように4局に1局は初手d4となっています。
正統派の一手でありながら、相手の経験が比較的少ないラインを進むことができます。
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドのよくある流れは?
白:初手はd4でクイーンサイドからの中央支配を狙っています。
黒:白番と同じ意図で中央支配を狙います。
白:黒の中央のポーンへ圧力をかけます。
もしここで相手がポーンを取ってくれば、相手のセンターポーンを取り除くことに成功したことになります。
黒:黒番としてはc4を取りたくない(ディクライン、拒否)のでeポーンでdポーンをサポートします。
初心者のうちは「攻撃されたら取りたい」という考えが第一に浮かぶと思いますが、このように安易に交換せず駒同士の緊張状態を維持するという考え方は上達するのに役立ちます。
□白番視点
エクスチェンジ・バリエーション(Exchange variation)
クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドのうちのエクスチェンジ・バリエーション(Exchange variation)を見ていきます。
白:Nc3とナイト展開し、d5ポーンに圧力をかけます。
黒:同じくd5ポーンを守るためにナイト展開。
白:ポーンをキャプチャ。これによりcファイルがハーフオープンファイルになります。
後々cファイルにルークを移動させればルークの攻撃を活かせます。
白:ビショップ展開し、ナイトをクイーンへピンします。
これでナイトは動くとクイーンが取られるため、自由に動けなくなります。
黒:f6のナイトが動けるように、ビショップでピンを解消します。(アンピン)
これでピンされていた黒のナイトは自由に動けるようになり、d5ポーンを再び守ることができるようになりました。
白:赤矢印のダイアゴナル(斜めのライン)に入りたいため、相手のビショップより先にクイーンを展開し、ダイアゴナルを支配します。
黒:キャスリングでキングの安全を確保。
白:中央のポーンを固めるため、ライトスクエアビショップ展開の道を開くためにe3としました。
※ポーンを後に動かさないとダークスクエアビショップを展開できなくなるため、ビショップをg5かf4に出した後にポーンをe3としましょう。
白:ライトスクエアビショップを展開し、クイーンとバッテリーを組ませます。
(バッテリーとは「クイーンとルーク」を縦横に並べたり、「クイーンとビショップ」を斜めに並べることです。攻撃でよく使われるアイデアです。)
黒はビショップに攻撃をしかけますが、白はナイトと交換しません。
ナイトとビショップはどちらも3点ですが、ビショップペアはゲームが進んでいき開けた展開になるとナイトのペアより力を発揮するため保持することが多いです。
白:Ne2とナイト展開します。
通常はf3に置くのが自然ですが、ここでは赤矢印のようにポーンを使って中央を攻めることが狙いなので、e2に置いています。
また、f4へのナイトジャンプの選択肢の可能性も含んでいます。
白:キャスリングしてキングの安全を確保。
白:先程の予定通りポーンを使って攻めていきます。f2はビショップを入る場所にもなります。
白:ルークで中央のポーンを間接的に守ります。白がe3-e4とした後の交換でポーンを守る駒がいなくなることに備えています。
白:ビショップを引き、これもポーンを間接的に守る役割を果たしています。
白:e3-e4とポーンを突き、中央に攻勢をかけていきます。
ここまでを盤面で動かして確認しましょう。
エクスチェンジバリエーションでは、白番はクイーンサイドの少数のポーンを使って相手のポーン形を弱体化させる戦い方もあります。(マイノリティアタックと言います。)
少し難し目の話なので興味があれば覗いてみてください。↓
ちなみにクイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド/Queen’s gambit acceptedは?
d5-c4として、ポーンをテイクしてくるのがアクセプテッド。
この場合白はセンターを確保できるメリットがあります。
その後、ビショップでポーンを取り返すことができるので白としては好ましい展開です。
相手センターポーンを除去でき、スペース・中央支配ができ、駒展開が非常にしやすくなっています。
■黒番視点のQGD
※クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド/Queen’s gambit declinedは名称が長いのでよくQGDと略されます。
QGD、タルタコワーディフェンス
白視点の時と同様に最初はd5の攻防から始まります。
同等のセンターを求める、基本的な応手です。
白:d5への圧力。
黒:e6でd5をサポート。これにより一時的にライトスクエアビショップは外に出られなくなります。
(※c6でサポートするとスラブディフェンスになります。)
白:d5へのさらなる圧力。
黒:d5をさらにサポート。
白:ピンによりd5のサポートを無効化。
黒:Bf7によりアンピン(ピンを無効化)し、キャスリングの準備もできました。
白:自然なナイト展開。
黒:h6によりビショップの判断を迫ります。取ってくれれば相手はビショップペアを失うことになります。
白:ピンを維持するためBh4と引きます。
黒:キャスリングによりキングの安全を確保。
白:ライトスクエアビショップ展開+中央サポートのためe3。
黒:b6にタルタコワーディフェンスとなります。ライトスクエアビショップをb7へフィアンケットする狙いがあります。
白:d5をテイク。(8. cxd5)
黒:ナイトでテイクバック。
(クリックで開閉)ここで相手がビショップ展開してきていたら?? (8. Bd3) 相手に1手損させることができます。
8. Bd3と展開してきたところをポーンテイク。
相手ビショップが2度無駄に動くことになります。
一見意味のなさそうな非常に地味な一手ですが、チェスにおいてがこの小さな損得の積み重ねが勝敗に影響してきます。
白:ビショップでビショップをテイク。
黒:クイーンでテイクバック。これにより自陣の窮屈さが比較的緩和されました。
白:ナイトでナイトをテイク。(Nxd5)
黒:ポーンでテイクバック。これによりライトスクエアビショップの道が開き、有効活用できるようになりました。
Lichessレート1,200~2,000において、この局面での黒番の勝率は47%となっています。
互角であり黒番としては悪くない数字です。
QGD、タルタコワーディフェンスまとめ:
まとめ
初手から中央支配を狙う健全で正統派のオープニングの一つです。
オーソドックスであるためチェスの守るべき原則に基づくプレイを身に着けやすく、初心者にもおすすめです。
初手e4と比較して対局は穏やかな展開となるため、攻守のバランスをとりながら指すのが好きな人にピッタリです。
初手e4ばかりでは飽きてしまう人も多いと思いますので、初手d4で遊んでみる時には一番に試してもらいたい定跡です。