はじめに

チェスにおいてキャスリング(Castling)とは、「キングを端に移動しつつルークを中央へ動かす、一手で2つの駒を同時に動かせる特殊な動き」のこと。
チェス未経験の人に説明するとしたら、「キングを城の中に素早く逃げ込ませる動き」と説明するとわかりやすいかも。
<キャスリングが可能な条件>
1:自分のキングと自分のルークの間にピースがない
2:キングとルークが対局開始から動いていない
3:キングが移動するマスが攻撃されていない
1~3を満たせばキャスリングできます。
が、文字だけではイメージが沸かないと思うので例を見てみましょう。
●チェスのルールについては以下の記事で解説しています。
キャスリングの例
白が動かす番です、この後キャスリングできます。
キングを端から2マス目に移動させつつ、ルークをキングの左に動かすのがキャスリング。

オンラインの対局だと、キングを動かすだけでルークも同時に動きます。
実際のチェスセットだと、もちろん自分の手でキングを動かし、ルークを動かす必要があります。

以下のボードで▶をタップして、動かしてみましょう。
キャスリングの動きが一目でわかります。

ChessJapan 日本チェス連盟公式チェスセット モダン・トーナメント 44cm ヘビー
キャスリングには2種類ある
実は、左右どちらにもキャスリングができます。
以下の動かせるボードで、▶をタップして試してみてください。

<ショートキャスリング>
キングが右へ2マス、ルークが左へ2マス動きます。

<ロングキャスリング>
キングが左へ2マス、ルークが右へ3マス動きます。

キャスリングの目的は?
キングを安全な場所に逃がす

チェスにおいて、ボードの中央は相手の攻撃を受けやすい場所です。
キャスリングをして、中央から素早く端の方にキングを逃すことで、キングを安全な状態にするのが目的です。
チェスにおいて一般的に、中央よりも端の方が攻撃がしにくくなっています。
キングの前のポーン、キングの周辺を守るナイト、それからルークの組み合わせによってキングの安全を確保できます。
チェスにおいてキャスリングは、基本的にはできるだけ早めにした方がいいとされています。
ルークを戦いに参加させる
<ルークは最初、身動きできない!>
チェスにおいてルークは初期配置では端に配置されていて、自由な動きができなくなっています。

キャスリングをすることで、戦いが起こる中央に向かって素早く移動できます。

もしキャスリングがなければ、キングを前に動かして危険な状態にしつつ、ルークを中央に回さなければなりません。
キャスリングはキングを危険にさらすことなく、素早く攻撃と守りを同時に行える、とても重要な動きです。
ルークが中央に行けば、自分がキャスリングをしていて相手がキャスリングをしていない場合、 相手のキングやクイーンに対してルークの攻撃準備ができます。
ルークを中央に配置するのは攻撃の有効な手段の一つで、チェスでは目指したい形です。
キャスリングできるかできないか
できるとき
緑の丸のマスを攻撃されていても、キングは通らないマスなのでキャスリングできます。

できないとき
赤の丸のマスを攻撃されていると、攻撃されている方向へのキャスリングできません。
キングがキャスリングする時の通り道だからです。

キャスリングしたキングで一番安全な形は?
安全な形

キャスリングした時、キングの前のポーンが動いておらず、横一直線になっている状態が一番安全です。
キングの前に弱点がありません。
キャスリングをした後は、キングの前のポーンを動かさないことが基本と考えておきましょう。(例外あり)
ただし、場合によっては
・キングの前のポーンを動かさないといけないとき
・hポーンを使ったほうが良い時
・キングの前のポーンを動かすことで攻撃に活用できたり
などの例外もあります。
キングの前のポーンを動かさないほうがいいというのは、基本的なイメージということで押さえておいてください。
●キング前のポーンを攻めに使う方法については以下の記事でまとめています。(初級者くらい~)
キング近くのナイト
ナイトがボードの端から2つ目のマスにいると、キャスリングしたキングの周辺をうまく守ってくれます。(下図)
<ナイトが特に守りで役に立っているマス>
相手のクイーンの侵入を止めるのにかなり役立っています。

●実際に対局してみると、相手を攻めるとき、このナイトがあることで「動かしたい場所にコマを置けない、取りたいコマが取れない!」と感じるはずです。
攻めにも守りに効いている、とても良いコマです。
キングの安全性が弱まる形
キング前のポーンを進めると、キング前の守りが弱まります。
ポーンを突いたことによるキング前の弱点は受け入れられるレベルかどうか、指す前に確認が必要です。
<弱点の発生>
以下の図のように、gポーンを突くと◯の部分はポーンで攻撃されていないので、守られなくなります。
相手の駒が侵入しやすくなります。

●弱点について知りたい場合は以下の記事を参考にしてみてください。(初級者くらい~)
hポーンを動かす

●キングの前のポーンは動かさない方がいいと言いましたが・・・
hポーンについては、相手の駒の進入を許さないために、一つ前に進ませる形(ルフト)もよく使われます。
この動きは、キングをバックランク(自分から見て一番手前の行)から逃がす逃げ道にもなっています。
この形は覚えておいてもいいでしょう。
<バックランクメイト>
バックランクメイトは、チェスにおいて、1発で勝負が決まる動きです。
キング前のポーンが動いていないとキングの逃げ場がないので、即チェックメイトになってしまします。
hポーンを動かしておくか、相手にバックランク(自分から見て一番手前の行)に侵入されないように注意が必要です。

●ルフトについてはこちらの記事で解説しています。
ビショップのフィアンケット

一つ前の項目では、キングの前のポーンを動かすと弱点ができて、あまり良くないという話をしましたが・・・
チェスの定跡(オープニング)においては、あえてキングの前のポーンを動かすキャスリングの形もあります。
動かしたポーンの場所にビショップを配置することで、ポーンが攻撃できない場所をビショップでカバーしようという考え方です。
これによって弱点の発生を最小限に留めることができ、かつビショップの攻撃力も活かすことができる形になっています。
初心者のうちは、あまり気にする必要がないかもしれませんが、定石としてはこれも当たり前にある形なので覚えておくと良いでしょう。
<フィアンケットしたビショップのあるキャスリング>
ポーンの弱点をカバー+ビショップを比較的安全な位置から攻撃にも使えます。

相手のキャスリングを妨害する(初級者~)

相手にキャスリングさせなければ、キングが中央にとどまり、ルークを活用しにくくなります。
相手のキングを攻めやすくなるよい手になりやすいです。
1:ビショップ/クイーン/ナイト/ルークを使って、相手キングがキャスリングで通る道を攻撃することができないか考えてみましょう。
2:キングをチェックして動かすことができれば、キャスリングの権利を奪えます。チャンスがあれば狙ってみましょう。
キャスリングの歴史

キャスリングは時代によって様々な手法がありました。
最初から今の形だったわけではなく、長年より良いキャスリング手法が考えられてきたんですね。
現在のキャスリングの形は、1620年にフランスで、1640年にイングランドで確立されました。
ルークの移動とキングの移動を1手にまとめたものです。
●現在のキャスリングが確立する以前のルールの例
1:
キングがナイトのように一度だけ動けるというもの。
2:ヨーロッパ、13世紀初頭~
キングが1度だけ2マス動けるというもの。
3:北アフリカ
キングを安全なマスに移すために2手を使う手順がありました。
まずキングが自分の第2段目(セカンドランク)へ移動し、その後ルークとキングが互いの元の位置へ入れ替わる形で動きました。
4:中世のイングランド、スペイン、フランス
白のキングは「c1、c2、d3、e3、f3、g1」のマスにジャンプすることができました。(※下記画像参照)
ただし、駒を取らないこと、チェックされていないこと、チェックを通過しないことが条件でした。黒も同様に対応するマスへ移動可。
・・・などがありました。
※中世のイングランド、スペイン、フランスでのキングのジャンプ可能位置。

キャスリングの表記について:
1811年版のチェス理論書で、ヨハン・アルガイアー(Johann Allgaier)は「0-0」という表記を導入しました。
クイーンサイドのキャスリングを表す「0-0-0」という表記は、1837年にアロン・アレクサンドル(Aaron Alexandre)によって導入されました。
参考url:ttps://en.wikipedia.org/wiki/Castling#History
もしキャスリングのルールがなかったら?

もしキャスリングのルールがなかったらどうなるでしょうか。
チェスは一つ一つのコマが強力です。
キングは初期配置が中央に置いてあり、チェスにおいてキングに中央にいると攻撃が起きやすいという性質があります。
戦いを始めても、すぐにキングが戦いに巻き込まれて危険な状態になると考えられます。
キングを一歩一歩逃がしていくのは、少しスピード感に欠けてしまうかもしれません。
キングを端に逃がすのか、中央に置いておくのか、どのタイミングでキャスリングするかの駆け引きあることで戦略の幅が生まれ、チェスが一段階面白いものになっているのではないかと思います。
条件を満たした時だけ、素早く、安全な状態にでき、ルークを展開できる。
なかなかうまくできたルールだと思います。
<キャスリングのルールがなかったら・・・>
キングを逃がすのに最低でも3手かかります。

キャスリングの実戦例

キャスリングは、ほとんどの対局で現れる動きです。
実際にあったキャスリングの動きを見てみましょう。
中にはキャスリングでチェックメイトするという、とても珍しい対局もあります。
Jose Raul Capablanca – Joseph Henry Blackburne (1914年)
5手目でのキャスリング。
Jose Raul Capablanca – Charles Jaffe (1910年)
7手目でのキャスリング。
Antonin Kvicala – NN (1869年)
クイーン、ナイト、ルーク、相手の駒により逃げられない形でキャスリングによるチェックメイト。
キャスリングでのチェックメイトは、チェスを指す人が憧れる勝ち方の1つではないでしょうか?
Yury Bukayev – V Sokolov (2025年)
相手はビショップでブロックすれば一旦はチェックメイトは逃れられますが、ルークで取り返せばチェックメイト。
さいごに

●基礎的で重要ポイントをまとめると・・・
・キャスリングは、基本的にはできるだけ早めにした方がよい
・キング前のポーンできるだけ動かさないようにする。(hポーンは動かすこともある)
・バックランクメイトに注意する
といったところです。
●チェスにおいて、キャスリングだけとっても、深堀りするとかなり色々な要素があって圧倒されたかもしれません。
一度にすべて吸収しようとするのではなく、大体のふわっとしたイメージを持っておいて、実戦を通して少しずつ理解を含めて深めていくのがいいと思います。
難しく考えず、とにかくチェスを楽しんでもらえると嬉しいです。
それでは!😊

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